記憶力とは何か? ③
「 What need to memorize 」 No.3
記憶のメカニズム
記憶の種類を確認したところで、次は記憶のメカニズムについて考えてみましょう。私には難しい科学的な話は理解できないので極々簡単な説明しかできませんのでよろしく。
大都市でタクシー運転手するには、入り組んだ道路をこと細かに覚えていなければ仕事になりません。膨大な量の記憶力を必要とするそうです。
その都会のタクシー運転手と一般人の脳を比べたとき、運転手の脳には普通の人に比べて非常に発達している部分があります。
海馬です。
基本、脳細胞というのは生まれた時が最大で順次減っていくものと考えられてしましたが、タクシー運転手の海馬は発達している。
つまり、人間の脳(記憶力)は鍛えることができるということを証明している訳です。
なら、「海馬に記憶が保存されているか?」と思われるかもしれませんが、実はそうじゃない。記憶が保存されている場所は側頭葉。
記憶は脳のどこか(大脳皮質など)で作られ、海馬を通過して側頭葉に保存される。記憶は側頭葉から呼び出される訳です。
では「海馬はただの通路か?」と言うとそうでもない。
海馬は、
「記憶するもの」
「記憶しないもの」
を選り分ける場所なんですよ。
ここでちょっとばかり記憶の分類の話に戻りましよう。実は記「憶の種類」によって保存場所と呼び出す場所が違うんですよ。
記憶には「階層」が存在します。
エピソード記憶と短期記憶は意識的に取り出せるので顕在記憶と呼ばれます。意味記憶、プライミング記憶、手続き記憶は「きっかけ」がなければ取りだせないので潜在記憶と呼ばれます。
階層を順番にすると、
エピソード記憶
短期記憶
意味記憶
プライミング記憶
手続き記憶
上にいくほど顕在化している記憶。下に行くほど潜在下にある記憶。
でもって、手術で海馬を切除してしまった人のお話。
海馬を切除したからと言って何も思い出せない訳ではないそうです。文字を書いたり読んだり、切除以前の記憶を呼び覚ますことは可能。
一方、新しく人の顔を覚えたり、道順を覚えたり、知識を詰め込んだりすることは出来ない。
ところが、鏡を見ながら文字を書く(実際やってみると難しい)という作業をやってみると三日ほどでかなり上手に書けるようになったそうです。でも訓練したことは覚えていない。
つまり、手続き記憶と短期記憶は機能しているということ。
以上のことから海馬とは、エピソード記憶と意味記憶を「ふるい」にかけて側頭葉に保存するものを選ぶ役割を担っているのではないかと考えられています。
エピソード記憶と意味記憶は海馬に一時保存される。海馬でふるいにかけられて必要なものは側頭葉に送られ長期保存される。不要なものは側頭葉に送られることなく消える。
保存される場所・呼び出す場所はそれぞれ2か所ある訳です。パソコンで例えるなら海馬はメモリ、側頭葉はハードディスクといった感じですかね。
私たちが切望してやまない「英単語の長期記憶化」のヒントは海馬にありそうです。
エピソード記憶も意味記憶も分類上は長期記憶ですが、文字の書き方みたいに何十年たっても忘れないという訳ではありませんよね。本当の長期記憶にするには側頭葉に送らなければ。
海馬に記憶が留まる期間は長くても1カ月そこそこ。つまり、この1カ月間で側頭葉に長期記憶として保存するべきかどうかが決定される訳です。
長期記憶にするためには1か月間、海馬にアピールし続ける必要がある訳ですね。
これは重要な情報であると。
※参考 「記憶力を強くする」 著者:池谷裕二氏
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